無料と無償の違い
日常生活の中で、「無料アプリ」や「入場無料」、「無償修理」、「無償配布」といった言い回しを聞くことがあります。これらの中に出てくる「無料」と「無償」は、どちらも料金を払わなくてよいという点では同じですが、実際の内容面では、ニュアンスが異なることがあります。特にビジネスシーンにおいては、その仕組み面で大きな差異があります。
ここでは、何気に使われることが多い、「無料」と「無償」について、その意味や違いを簡単にまとめてみました。
目次:コンテンツ構成
無料の意味と用法
無料(むりょう)は、料金を払わなくてよいことをいいます。これは、○○がないを意味する「無(む)」と、代金を意味する「料(りょう)」からなる用語で、「有料」の反対の概念となっています。
一般にビジネスシーン(商取引)においては、企業は「無料」にしただけでは全く意味がないので、以下のように、無料にすることによって得られるメリット(顧客獲得や収益化などの仕組み)を構築しています。
●無料アプリ
ゲームのアイテム課金、高機能の有料版アプリの提供、ネット広告の表示など、収益を上げる仕組みを構築している。
●無料会員登録
個人情報の収集、アンケートの回答、レビューの蓄積、潜在顧客の開拓、メール配信、クーポン提供、広告表示など、顧客獲得や収益獲得の仕組みを構築している。
●入場料無料
娯楽施設等で、入場料を無料にして集客する一方で、商品やサービスの販売で収益を上げる仕組みを構築している。
無償の意味と用法
無償(むしょう)は、報酬のないこと、代金を払わないでいいことをいいます。これは、○○がないを意味する「無(む)」と、損失に見合うものを返すやつぐなうを意味する「償(しょう)」からなる用語で、「有償」の反対の概念となっています。
一般にビジネスシーン(商取引)において、企業が「無償」という用語を使うケースは、以下のように、ネガティブなものか、ポジティブなものかのいずれかになります。
●ネガティブなもの
製品の「無償修理」や「無償交換」などは、何らかの不具合があって、企業側の責任で無料で行うもので、企業側にはコストが当然発生する(収益にはマイナス)。
●ポジティブなもの
更新プログラムの「無償提供」は、顧客の利便性向上や顧客の維持につながるので、企業側には無料でもメリットがある。また、特許の「無償公開」は、技術のスタンダード化やマーケットの拡大につながるので、企業側には無料でもメリットがある。
無料と無償の違い
最後に「無料」と「無償」の違いをざっくりとまとめると、以下のようになります。
◎用語面から見た場合、「無料」と「無償」は、どちらも一文字目に「無」が付くが、二文字目の「料」と「償」の違いで、ニュアンスが必然的に異なる。例えば、「無償の愛」と言っても、「無料の愛」とは言わず、「無償」を使う場合、それなりの重みがある。
◎商取引での「無料」と「無償」は、どちらも料金を払わなくてよいという点では同じであるが、「無料」には何らかの見返りが求められることが多いのに対して、「無償」には特に見返りが求められない。